2009-04-05

宮本輝 地の星 流転の海 第二部

「(略)なんぼ戦争やっちゅうても、これが人間のすることやろかと思うようなことをやりよるのは、たいてい、いなか者の百姓出身の兵隊じゃ。若い女を犯して殺すのも、年寄りや子供の首をはねるのも、たいてい、いなか者の百姓出身の兵隊じゃ。なんでですかのお。なんで、いなか者の百姓が兵隊に徴られると、あんなえげつない残酷なことを平気でやるようになるんじゃろ……」
宮本輝 『地の星 流転の海 第二部』 新潮社 P91

 栃木のど田舎のヤンキー3人になぶり殺された、彼のことを思い出しました。主犯の萩原は本当にどうしようもないバカ者だったようです。無期懲役の判決が降りたとき、「正和くんのぶんまで生きたいです」と言ったそうなのだ。

 私のしていることは間違っているかもしれません。個人的な制裁を加えるというようなことはしてはいけないことなのかもしれません。それでも、私は被害者である正和さんが実名だされるなら、犯人たちの実名もだされるべきだと思っています。

 私のしていることが間違っていると思う人は遠慮なく仰って下さい。

 人が生きたり死んだりするのに意味なんてない場合が多いのはよく分かっているし、そういうものだと思ってはいますが、それでも彼があれ程の苦痛と絶望を味わわされて、殺されていった、それもなんの救いも意味もなく。ということに、涙が出る。

 音吉は上のせりふを言ったあと、しばらく別の話をし、それから熊吾に問われてこう答えます。

「わしは、わしが死んだあと、閻魔様にしか裁いてもらえんようなことを、ビルマの収容所でやりましたなァし。どんなことやと訊かんといてやんなはれ」(P94)

 彼もまた田舎の人間です。田舎から徴用された田舎出身の兵隊であったのです。
 音吉は夜中に急に恐ろしくなって、屋根に上って奇妙なダンスを踊ります。彼は、そうしていると、昔のように、親父がやってきて、「何をそんなにおそろしがっとるんや、お前が悪いんやない、お前が悪いんやないぞ」そう言って、抱きしめてくれるような気がするのだ、と答えます。
 私はしばらく本を閉じて泣きました。