2006-10-16

マルケス2 エレンディラ

(これでやっと読了本に追い付きました)
 一番好きなのは表題作です。題名には'信じがたい悲惨の物語'とありますが私には幸福な話のように感じられます。市内を引きまわされるベッドに犬の鎖でつながれ、血を見るような屈辱に耐える彼女であっても、そこには人としての価値ある生きかたがあるように感じるのです。金になるからかな?違うよね。良く分かりませんが、ウリセスを振り切って砂漠の中をひた走る彼女をして、この生き方こそ本懐であるなと。アマランタがクレスピの死の上に生き、処女のまま死んでいくのと裏返しであって同じなのです。

「失われた時の海」
 ううむ。この海の底の描写が素直に美しいなあと。マルケスの話って無垢というものがすでに汚れを内に抱えたものとして書かれていると思うのですが(天使でさえ小汚いおっさんだし)この海だけはテラスに白い花咲き乱れる美しい所なんですよね。何か読んだとき安心しました。
 ここにも5ペソで春をひさぐ女の話が出てきますが、そうか、たとえ100人の男の相手をしようとそれで金を得て生きていける強さと、それが許される世界があることが私に救いを感じさせるのかもしれません。
 アメリカ人のハーバート氏が人の価値と金を交換し富の公平な分配と称しますが、それは人の価値に美しい幻想を抱かせないこの世の現実を見事にかいていると思います。兎のように、そしてみみずのように愛し合うトビーアスとクロティルデというのも、愛の中の純粋さと汚辱を感じさせるようです。

 基本的に"大人のための残酷童話"と銘うっているだけあって、どの話も痛々しいです。でもそんな痛々しい世界に生き時には愛し時には殺し合いしているのが私たちなのではないでしょうか。なんかきれいにまとめましたね。